もろみ酢の発明家

もろみ酢誕生のよろこび

もろみ酢誕生のよろこび

石川 信夫(Nobuo Ishikawa)

昭和10年10月26日生まれ

昭和36年東京農業大学・醸造学科卒、同年5月(資)石川酒造所勤務。47年8月同代表社員、平成5年11月(株)石川酒造場代表取締役。

「ふつう、日本では夏に酒を造ると腐ってしまうのですが、沖縄でお酒を造っても腐らないのは、黒麹菌が発酵するとき、大量に出来るクエン酸に殺菌作用があるからです。沖縄の酒造り(泡盛造り)は強力なクエン酸の下でアルコール発酵させているのが特徴といえます。泡盛を蒸留したあとには、アミノ酸や酸味の成分を含むもとみ粕が出来ます。実は、そこに、体に良い部分が全部残っている、もろみ酢の元があったのです。

沖縄の人は昔から経験でそれを利用していました。文献を見ますと、古い沖縄料理は、この液(蒸留廃液=酒粕、沖縄地方の言葉で「カシジェー」)を有効に使っています。沖縄名物のラフテーも昔はまず、肉をこの液に漬けこんでいました。また泡盛が沢山できるようになって、「カシジェー」は飼料や肥料としても使われるようになっていき、沖縄の豚が赤みが多く、うまみも濃い理由が「カシジェー」の飼料にあるのです。また、この豚は流行病にもかかりにくい体質になるとという特徴も云われています。

私は、なんとかこの素晴らしい素材を有効活用できないかと考えるようになりました。まず、西表島特産の黒砂糖とザラメ糖を少し加えて口当たりの良い沖縄酢を研究開発しました。当時造ったものは、2倍に薄めて飲むタイプです。そして、ついに沖縄が本土復帰した翌年の1973年、沖縄産業祭りに「もろみ倍酢」の商品名で初出品しました。勿論、「もろみ酢」という名前も自分が考案したものです。

その後、平成4年頃から売れ出し、当社が特許申請しなかったこともあり、各泡盛メーカーをはじめ大手企業もどんどん参入し、一時は泡盛と肩を並べる地場産業に成長しました。そのため、色々なもろみ酢が出回ることになり市場も乱れました。しかし当社は「元祖」を守り抜き、カメ仕込の本物を今も同じ製法で作り続けております。」